ラップし、量子コンピュータにおける計算への応用研究なども報告されており、その応用範囲は多岐にわたります。
一方で、私たちの目に見える赤色よりも少し波長が長い赤外領域の光を使うことで、分子を識別することができます。さまざまな分子はそれ固有の周波数で振動しています。そこに周波数の合った赤外光が当たると、分子が共鳴的に振動し、その光は吸収されます。つまり、広い赤外領域の光を用いて、どの周波数の光が吸収されたのかを見ることで、分子の種類を識別することができます。
これは赤外分光技術として知られており、例えば、大気中の二酸化炭素濃度分析、土壌内の化学成分の分析、材料科学やナノデバイス、ライフサイエンスなどの基礎や応用研究における物性分析には欠かせない技術となっています。
周波数の合った赤外光を分子が吸収したら、それだけ大きな力が分子に働かないだろうか。また、さまざまな分子が混在する中から、狙った分子だけを動かすことはできないだろうか。我々はこの着想に基づき、2020年より赤外レーザー、特に中赤外レーザーを用いた光マニピュレーションの研究を開始しています。
現在は、分子よりも三桁大きいマイクロ微粒子を用いた実証実験には成功しています。具体的には、中赤外レーザーに対して、吸収量の大きい微粒子ほど速く押されることを明らかにしました(イラスト参照)。移動距離の違いを利用することで、微粒子を分子の種類ごとにわけることが可能になると期待されます。
当事業の研究では、対象物質のナノスケール化に取り組み、中赤外レーザーを用いたナノ物質操作技術の創出とその応用を目指します。具体的には、ナノ材料やウイルス、タンパク質、分子を赤外スペクトルの違いによって分離できる技術を創出し、それらの選別回収や選択的トラップ、配向技術への応用へと展開していきます。
〇用語解説
光マニピュレーション・・・光で微小な物体を動かし操作する技術
分子振動共鳴効果・・・分子が持つ固有の振動周波数と、外部から与えられる光の周波数が一致した際、その分子の特定の振動が非常に強く励起される現象


コメント