奈倉有里さんは、ロシアに約6年間滞在し、現地で暮らす人々と深く関わった経験を持つ。ウクライナ戦争が始まると、友人や知り合いは「自分たちはやった」と自責の念にさいなまれていた。奈倉さんは、文学が果たす役割を信じており、「言葉は偉大だ。なぜなら言葉は人と人をつなぐこともできれば、人と人を分断することもできるからだ」というトルストイの言葉を指標にしている。
新潟県柏崎市で高校生に講演した奈倉さんは、同地で暮らす人々との交流を通じて「文脈」を感じた。ウクライナ戦争の報道では、ロシア政府に賛同していないであろう人たちの姿は想像できなかったが、柏崎での生活では、原発関連の仕事に就く人々の複雑な考え方や、近所の女性の「夫と子どもと考え方が違うから、家では原発の話はしない」という言葉などを通じて、多面的な現実を知ることができた。
奈倉さんは、翻訳家として数多くの作品に携わってきた。ノーベル文学賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチさんの「亜鉛の少年たち」や、ロシアの詩人セルゲイ・エセーニンの詩を引用した自身のエッセー集「文化の脱走兵」などが例に挙げられる。文学は地理的な距離を埋め、時代を超えて人と人をつなぐ力を持つ。
現在、奈倉さんは新潟県柏崎市で生活し、高校生向けの講演や執筆活動を行っている。彼女の作家としての信念は、「言葉は偉大だ」というトルストイの言葉に集約される。


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